voice=kiss
ぷろろーぐ




とたとた

ゆっくりだけど小走りで
屋上の階段を上って行く

耳にはいつも通りのヘッドフォン。そしてそこから流れる大音量のアイツの声

静かな階段に音漏れが酷い


そして、屋上へ続く扉の前に辿り着く。
古びたドアには「立入禁止」の文字
にもかかわらず、そのドアはすんありと開いた


開けると、夏の匂いが広がって・・・。

それに混じってアイツの匂いも鼻をくすぐる




「いた」



屋上の手すりによりかかって、楽譜を持つ男

私の・・・大切な人

私の気付いた男はにっこりと笑う
そして・・・



「やっときた」



と呟いた。

耳には大音量が響き続けているが、口の動きでなんと言ったかわかる。

私の特技だ

口の動きを見れば何を行っているかある程度何を言っているかわかるこの特技
これのせいでこの男にはたくさん迷惑をかけた。





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