voice=kiss
1 おくじょうで

高校1年の春







私はその春、私立のA校に進学した。
都会と田舎の真ん中のような街に堂々とたたずむその校舎
一目見た人なら一瞬「金持ちが通うとこ」と感じそうな外見だが、そんなことはなく、ごく一般的なただの私立。

多く親というものは「私立」よりかは「公立」を進めるが、うちの親に関しては全く抵抗もなく。

「勝手にすれば」

と返された。
親は私がどこへ行こうが行かまいがどちらでかまわないのだろう

下手したら私が死んだって
「へぇ」で済まされそうだ。

私=面倒な不良品

親はそう言う見方で私を見ているのだろう。

そんな親がいる家庭で、「居場所」なんてものが存在するはずもなかった。

この高校に進学する前の中学では、居場所があったかというと・・・。
正確にいえばあった。





「聞き上手」としての居場所が





・・・まぁ、そのことは置いといて。

とにかく、私はこの学校に入学したんだ。
おめでとう・・・ぱちぱち。
自分へ拍手。
自画自賛とかとはちょっと違うぞ。

とにかく今は拍手が欲しい気分。

入学式に貰う、「義務的な物」じゃなくてさ。
自然と手が音を奏でる。それがほしい。

なんだか、誰かに褒められたい気分。
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