voice=kiss
「1時間目」
1-Cでの私の席は窓側の一番後ろというものすごくラッキーな席だった。
教室は3階で、広い校庭と住宅街の景色がすごく落ち着く。
私は授業が始まる直前まで、ヘッドフォンをつけていたのだが、担任が入ってくるのを見てそれを外した。
外すと初めてそのざわつきが耳に入る。
みんな楽しそうにはじめての面々と話をしていた。
私はその光景をちらりと見て、すぐに担任へと目を向ける。
体格のいい若い男教師は、大きな声で話はじめた。
「みんな、おはよう。今日から君たちの担任になった。 高岡 げんきです。名前のことはあまり突っ込まないように・・・まだみんなの顔と名前が一致しないので今から出席をとるから元気に返事してください」
高岡と名乗った教師は、明るい声で生徒の名を呼んでいく。
みんなやる気のない声で返事をしながらも、どこか楽しそうだ。
そして、私の番がやってくる。
「森乃 るか」
私の名前が、その低い声で呼ばれた。
仕方なく、窓を向きながら。
「はい」
と返事をした。