恋の空模様

風の贈り物

 ねぇ、覚えてるかな。暖かい日差しの降り注ぐあの場所で、二人は当たり前の様に出逢った。きっと君に出逢えたのは神様がいてくれたからなんだ。神様は私に君という贈り物をくれた。あの日のことを今でもはっきり覚えてる。
 ねぇ惷、あなたは今なにをしていますか?
 

 新しい制服に新しい私の居場所。そして私の新しい仲間たち。いろんな期待を抱いて迎えたこの時間。そう、今日は中学校の入学式。1人県外からやって来た私は自分ひとりで新しい始まりを迎えようとしていた。
初めて開く、この教室のドア。今日からここが、私の居場所になる。私は深く息を吸って、そっとドアを開けた。
 
 ガラっ・・・
「うわ・・・」
教室の中にいる新入生の数は、まだまばらだった。
けれどその少ない人数の視線が一気に私に集まる。
「気まずい・・・」
私はとりあえず自分の席を探した。

 
 さ・・・向野、櫻木・・・
あった。櫻木・・・櫻木千愛。私は名前を確認して、席に着いた。
さっき私に注目していた人たちは、近くにいる友達と話を再開していた。ようやく、1人の寂しさを痛感する。皆、どうしてるだろう。この教室には、かつての友達は1人もいない。ましてや、知ってる人すらいない。たった1人この場所で、私はうまくやっていけるのだろうか。途端に不安が襲ってきて、私はふと顔を伏せた。

 「おっ皆そろってるな!!」
ドアの開く音と同時に、威勢のいい声が聞こえてきた。
どうやらさっきの子たちと同じ小学校出身の男の子らしい。
「あっヒロ~!!同クラ!?」
「おう!!望たちもだ!!」
「すっごい!!昔と変わんないじゃん!!」
ヒロと呼ばれている男の子は、足早にさっきの女の子たちのもとに近付いて行った。
・・・あの人たち、なんか苦手だなぁ・・・ただ皆がそろっているってことに、劣等感を抱いているだけかもしれないけど。今の私は、あの人たちとつりあえそうにない。
ため息をついて、窓の向こうを眺めた。私の席は、窓際からはなれているから決して眺めがいいわけではないけれど、遠くからでも見えるあの空がすごく好きだった。
 
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