恋の空模様
「でも名前読めないや。苗字は分かるけど。」
「それなんだよ!!皆読めなくてさぁ・・・」
その時に、ふと誰かの気配を感じた。

「あっ惷(しゅん)」
「せな。さくらぎせな。」
「えっ・・・」
私は驚いて顔を上げた。
「合ってる?」
「う・・・うん・・・」
「あっ当たった!!しかも喋った!!」
「おいヒロっ」
「ははっだってさ!!そっか!!せなかぁ・・・なんかごめんな!?」
「いやっ・・・そんな別に・・・っ」
「ほらやっぱお前のせいだよ。」
「違うだろ!!」
「間違いないって。な?そうだろ」
「いっいや・・その・・・」
「ほら!!困ってるじゃねぇか!!」
「元凶はお前だよ!!」
「だからぁっ」
急に現れた彼は、皆の話を笑いながら自分の席に着いた。

 「向野惷」 とても優しそうな目をしたあなたは、こうやっていつも私を助けてくれた。
私はこの日の事をずっと覚えてる。きっと君に出逢えたのは奇跡なんかじゃないと思う。あの日2人は当たり前の様に出逢った。
暖かい日差しと、柔らかな風のなかで。
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