恋の空模様

つながり

 「えぇっと・・・今日から皆さんの担任になりました。1年間という短い期間ですが、よろしくお願いしますね。」
ざわざわとした教室では、新しく赴任した担任の先生が話を始めていた。もちろんちゃんと話を聞いている人はほとんどいない。
「ほら!!静かに!!今からこのクラス全員の名簿を配ります。先頭の人に渡すので、後ろに回して下さい。」
そう言うと先生は手際よく名簿を配り始めた。
「ん。」
私にも前の男の子伝いに名簿が渡って来た。さっき、ただ1人私の名前を読めた人。
「ありがと・・・」
「ん。君ここら辺の奴じゃないの?」
「うん・・・県外から来たんだ。」
私は後ろの人に名簿を渡しながら言った。
「ふ~ん・・・通りで。アイツら無神経だったな。」
「いやっそんなことないけど・・・ちょっと緊張した・・・」
「やっぱりね。しかも名前読めてないしさ。」
「あれ、読める人少ないんだ。だからびっくりしちゃった。」
「そうなの?勘ってすごいな。」
「勘だったの?」
「うん。せっていうのは想像ついたけど、なは勘。」
「すごいね・・・」
「そうでもないよ。」
彼はそう言って、前に向き直った。
「名簿が行き届いたみたいですね。では話を再開します。」

 「このクラスは全30人構成です。並びは名前順。班は5人で1グループを6つ作ります。まずは班になって、それぞれ自己紹介をしましょうね。皆の前での自己紹介はまた後日。では始めてください。」
先生の言葉で、皆が一斉に机を動かし始めた。私も遅れをとらないように急いで班にした。

「この5人かぁ・・・」
私たちのグループは男の子2人、女の子3人の集まりだった。
「とりあえず、皆名前確認しよっか。」
てきぱきと話を進めるその子の提案で皆は名簿に目を通し始めた。

 
私と、あの男の子と・・・後は知らない人ばかり。
「さくらぎ・・・せ・・・んん・・・」
私の横の席の子が、私を見て言った。
「せなって読むんだ。」
「せなちゃんか!!すごいっカッコいい名前だね!!」
「ありがとう。」
「ねぇ、せなちゃんって県外から来たの?」
「えっなんで・・・」
「ごめん。さっき惷と話してるの聞いちゃったんだ。」
「そうだったんだ。うん。そう。」
「へぇ・・・大変だね・・・緊張したでしょ?」
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