Genius~守り人~
二人は言葉を交わすこと無く歩みを進めていく。

そして正面に現れた扉の前で止まる。


「來を連れて参りました。」

「入れ。」

短く返される御前の言葉。



列火は扉を開き來を部屋に入れる。



玉座に似た背もたれの高い椅子に座った御前。

ここは普段御前がいる部屋

殺風景で本棚と椅子以外はない。


御前は側近の列火以外をこの部屋に招き入れるコトは滅多にない。



―相変わらず何もない部屋…


目だけを動かし部屋を見回す。


―変わってないな…
…いや少しだけ暗くなったか…


御前の部屋はいくつかのランプが灯され來の部屋より幾分明るい。

しかし昔の御前の部屋を知る來にとっては暗いらしい。



哀哭溜に入ったばかりの頃、來はよくこの部屋に来ていた。

いや連れてこられていた。


五年前の來も今のように思ったことをズバズバと言ってしまう気質で、周りの大人たちから反感を買うこともしばしば。

そのたびに何らかの事件を起こし列火にここに連れてこられていた。

一年後にはそのような事も無くなり、同時にここに来ることも無くなった。


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