ねぇ、笑って
ぐず


愛は鼻を啜った。


あーあ。
授業サボっちゃった。


先生に怒られるかなぁ。


真実はきっと心配してる。


でもこんな顔で戻ったら余計心配するんだろうな。



ふう。


愛の口から泣き疲れた溜め息が漏れた。


諦められたと思ったのになぁ。


まだこんなに高野君の存在が大きかったなんて。


この気持ちはいつ消えるんだろう。


いつ友達に戻れるんだろう。


秋の風は思ったよりも冷たくて。


秋の紅葉が思ったよりも綺麗で。


「紅葉、ホントに綺麗だよ。高野君の言った通りだね」


誰もいないその場所で、小さく呟いて。


「ほんと。綺麗すぎて目にしみる」


全部を紅葉のせいにして。


それでも涙は止まってくれなかった。
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