ねぇ、笑って
「はじめまして、みやもとあいです」


何だか緊張して上手くしゃべれない。


前にいる数人の男の子達の名前も、さっき聞いたばかりだというのに思い出せない。




「あいちゃん歌わないのー?どんな曲が好き?」


ぼーっとしていたら、いつの間にか隣に座っていた男の子が馴れ馴れしく話かけてくる。


「えっと、私は聴くのが好きなので」


嘘だ。


「何だ、そうなの。ちなみにさ、あいちゃんは...」


「次の人ー、この曲入れたの誰?」


他の男の子の声が上から被さる。


「あ、オレオレ」


隣に座っていた男の子がマイクを取りに立ち上がる。


すると、他の男の子が愛の隣に座った。


さっき声を被せてきた男の子だった。


「大丈夫?」


その男の子は何気なくそう訊いた。


「え?」


何が?


愛は首を傾げた。


「なんか。タツヤが隣にいんの嫌そうだな、て」


さっきの男の子の名はタツヤというらしい。
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