ねぇ、笑って
「え.....と」


そこまで露骨な顔をしていただろうか。


確かにタツヤの外見は結構『チャラ』くて愛は苦手だった。


「ああ、ごめん。責めてる訳じゃないよ。アイツ悪い奴じゃないんだけど。空気読めないから」


軽く笑う男の子。


あ、この人高野君に似てる。


愛はふとそう思った。


普段は目つき悪くてやけに大人びてる、でも笑うと急に年相応な少年の顔になる。


とても聡くて、人の心の奥底を見透かしたような瞳と、さり気なく気まずい空気を壊してくれたり、その場に応じた適切なフォロー。


さっき声を被せたのも、あえて軽く笑ったのも、愛を気づかってだろう。


でも。


小さな違和感を感じて、愛は気づいた。


―――――高野君は、いつも私に笑いかける時、髪をくしゃってしたんだ。


何だか急に泣きたくなって、喉にせり上がった熱を、頼んでおいたいちごみるくで飲み込んだ。
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