キミ色ヘブン
そんな事は頭では分かっていた。理論の上では分かっている。

中山君は私を傷つけたいのではなくて、先を見たいのだと。


でも心が付いていかない。落ち着こうとすればするほど、私の心は逆方向を向き始める。

小さくついた傷が次第に大きくなって私の気持ちは傷を最小限に留めようと動き出す。

“だって、仕方なかったんだもの”と。


あの私は確かに私だった。

あの私が正しかったのもちゃんと分かっている。

だけど、だけど。

それだけじゃやっていけなかったんだもの。


私の感情は頭をすり抜け心からどんどんと暴走していく。

『幻想』だなんて、残酷だよ、中山君。
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