キミ色ヘブン
後から思えばこの時の私は手を差し伸べて貰う事ばかりを求めている子どもだったんだ。

子どもで甘ったれた私が傷を庇いながら次にした事。それは彼を責める事。

傷ついた分だけ責めてやりたかった。

頭の中を巡るのは汚い感情。理想や奇麗事を削ぎ落としたドロッとした醜い等身大の私の思い。

「仕方ないじゃない!」

中山君は私をただ見つめるだけ。

その少しの沈黙にさえ耐えられなくて私は口を開く。

「やっぱり中山君には私の事なんて分からないと思う。学校で自然体で生きていける中山君には私の気持ちなんて分からないんだよ」

何とか気持ちを伝えてその先を見ようとする中山君とは対照的な私のこの投げやりな台詞。

そしてぶっきらぼうな言い方。こんなんじゃ何も伝わる訳ない。

伝える何かがあるのかさえ疑問な台詞。

そよぐ風もまるで私の味方をする気がないらしく、ひと束の髪を私の頬に張り付けて通り過ぎていく。

もうメドゥーサにもなれない。
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