キミ色ヘブン
「あ……白川さん、変な匂いのなんか付けてる?」

「う、うん?」

……『変な匂いのなんか』ってコロンでしょうか?それしかないか……。

変じゃないと思うんだけど。一応おしゃれとして付けてるんだけどね?

「ねぇ、白川さん一年の時は朝、ここで油絵描いてたでしょ?」

そんな事より『変な匂い』のが気になるんだけど?私、変な匂いの女なの?

あ、でも同じクラスの百合ちゃんも同じのを使ってたはずで。百合ちゃんから変な匂いがしてきたことってないじゃん……。

「──さん?白川さん?」

「え?何?」

まるで中山君の言葉なんて耳に届いていなかった。だって『変な匂い』が頭をグルグル駆け巡ってしまって。

「朝一で油絵、なんで描かなくなったの?」

なんだ、そんな事か。

「朝から油絵の具いじるとテレピンと油絵の具の匂いが付くから」

臭いって言われるから。思われるから。

「……ふーん。そんな事かぁ」

そんな事って……大事な事でしょう?

皆と一緒である事って今の私達には大切な事でしょう?

この小さな社会で生きていくことは、想像以上に大変な事でしょう?
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