キミ色ヘブン
『2時だよ?絶対に遅れないで来て?』

いつになく強い口調の三上さんに完全に圧倒されたまま

「わ、わかった。2時に美術室。遅れないようにする」

ロボットの様に答えると彼女は『じゃ』と電話を切ってしまった。

後に残るのはプーップーッという無機質な音だけ。

「サチの心配して電話くれたの?優しい子じゃん」

受話器を置く私の後ろを小さな紫の花のプリントされたワンピースを着た姉が通過する。

「そんなんじゃない。そんなんじゃ……」

「ふーん。あ、シマもこの間心配してたよ、あんた元気ないから。じゃ、私家庭教師行ってくるね~」

「いってらっしゃ~い」

慌しくバイトに出かける姉の背中に『私、明日殺されたりするかもよ?』とは言えなかった。ていうか半分以上冗談だし。

だけどこんなきわどい冗談をしばらく吐いていない自分に気がついた。

それだけ私は友達と話をしてないって事なんだと思った。


< 120 / 215 >

この作品をシェア

pagetop