キミ色ヘブン
「毎朝ね、って言っても遅刻しないで学校来た日の朝は、いつも駐輪場からこっちの非常階段通って屋上で一服するでしょ?」

と中山君は第二美術室の窓の外のうちっぱなしのコンクリートの階段を指さす。

「……『でしょ?』って言われても」

ああ、そうだね、と頭をポリポリかきながら中山君はまた続ける。

「そうだ。白川さん、あの絵どうなったの?」

「……全国学生油絵コンクールで佳作になったよ」

「すごいじゃん」

「でも、友達は『芸術は爆発?』って笑った。『よく分からない』って言った」

「そっか」

「だからもうああいう絵は描かない。もっと賞を取りやすい絵にする事にしたの」

「なんか……残念だな。僕は好きだったのに、あの絵」

……『残念』?『好きだった』?

油絵の何も知らないくせに。

私がどんな想いで描いたのかも分からないくせに。勝手な事言わないでよ。

「もうああいう絵は見れないのかぁ。なんか、残念」

やけにのほほんとした低い声が私の神経に障った。

「そんなの中山君には関係ないじゃん!」

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