キミ色ヘブン
しまった、やってしまった。

そんなに咎めるように言わなくったって、『いーじゃん、そんなの~。てか中山君、“僕”って似合わないじゃ~ん』とか軽くかわすやり方だってあったのに。

というか軽くかわさなきゃいけなかったのに……

やってしまった。大失敗した。

怒らせたに違いない。ヤンキー全開で眉間にシワ寄せて、下品な顔で『ああ?』って言ってくるに違いない。

そう思って恐る恐る振り向くと

「白川さん、『関係ない』は酷いじゃん。一応僕達付き合ってるのにさぁ」

口の端から出した飴の棒をクイクイと器用に上下させている中山君がいた。

その表情は柔らかなままで。

優しいじゃん……。ちょっと感動してしまった。

「ご……ごめん」

一応謝ってみたけど、聞いてるんだか聞いていないんだか。

もう邪魔しないように本でも読もうっと、と美術室の椅子を並べてベッドみたいにするとそこに横になる中山君。

その手に握られている本のタイトルは『人生の目的』。

……似合わない事甚だしい。猫に小判の数段上を軽々と越えて行く。

どうしよう。まるで中山君ってまるっきり読めない。

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