キミ色ヘブン
答える代わりに『よいしょ』と後ろのシートによじ登る。そして大きな背中に掴まった。

「ごめんね、白川さん」

中山君が私の頭にヘルメットを乗せてくれる。

そんなちょっとした事が恥ずかしくて、目を伏せてしまう。

「行くよ?」

中山君のお腹に回した手に力を込めると、バイクは派手な音をたてて滑り出した。

顔を埋めたがっちりした背中からは今日も太陽の香り。それからちょっと香ばしい香り。

気づかれないように、私はこの匂いを胸一杯に吸い込んだ。
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