キミ色ヘブン
「……すまん。いや、でもいい薬だったろ?気取った絵ばっか描こうとしてたお前にはいい薬だったろ?捨てるわけねぇよ。いい絵だもんな、それ。……ってお前やっぱ泣いてんじゃねぇかよ」」

先生が作業台にあった白い布を投げてくる。

「こっ、これ、雑巾じゃん!」

「まだ使ってねぇよ」

未使用の雑巾で涙を拭いている私の後ろで先生がまたぼやく。

「あ~、掃除かよ。面倒くせぇなぁ、おい」

“なんとか見えるところだけでも綺麗に”をモットーに掃除に励んだ私達。全てが終わった頃には日はどっぷりと暮れていた。

掃除の後、島先生は私の2枚の自画像を私物の額に入れて飾ってくれた。

そして次の日の朝、美術室を訪れた私が見たのは、1つに『全国学生油絵コンクール 佳作』もう1つには『全国学生美術展 大賞受賞予定作品』とふざけた、でも優しい心の温かくなる小さなプレートだった。

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