キミ色ヘブン
「こっち、来るー?気持ちいーよー?」

ジーンズのままで腰まで海水に浸かってしまった中山君が手を振り回しながら私を見ている。

無理、と小さく手と首を横に振った。


ギラギラと光る水面から視線を外すと堤防の下の小道の先に小さな古びた赤い自販機が見えた。

喉、渇いたなぁ。

そう思うと同時に立ち上がっている。体は欲求に正直なものだ。


ガチャンと派手な音と共に出てきたサイダーを取り出して、プシュッと夏を先取りしたような音に引き込まれる様に一気に喉に流し込んだ。

炭酸特有の喉を刺すようなチクッとした痛みも、この見上げた空に中和されていく。

おいしい……。

その瞬間だった。ヌッと後ろから伸びてきた小麦色の腕が淡い水色の缶を私の手から奪っていったのは。

振り返ると喉仏がゴクゴクという音に合わせるかのように上下していて。

あ、間接キス……って中学生か、私は。
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