キミ色ヘブン
ゴロンと横になり、肘を立て、その上に頭を乗せて完全にリラックスモードの中山君が下から私を見上げる。

そうだ。これあげる、とポケットから出したもう片方の骨ばった手が私の前で開いた。

そこには白い小さな貝殻と黒くて細長い貝殻。

「綺麗だったから拾ったんだ。なんか、白川さんみたいでしょ?可愛いでしょ?」

「……どっちが私?」

「どっちだと思う?」

なぜ訊く?……黒だったらどうしよう。笑えない。

「こっち。はい、どうぞ」

私の手には日を浴びて可愛らしく光る真っ白な貝。

海風が頬を優しく撫でる。

「ありがとう」

「どう致しまして」

普通の会話なのに。なんでもない会話のはずなのに、細められた目を見たら恥ずかしくなった。

きっと下から見上げられると、顔が丸く見えるからだ。

「こうしてたら服も乾くね。あ、お昼食べたら、散歩しよーね?」

そう言い残して彼は眠りにおちていった。



これが私ならいいのに、と凛と光を放つ貝を見つめる。

中山君、ホントの私はキミがそこに放った黒い貝だよ。

「残念でした」

体育座りして膝を抱えて私も目を閉じた。


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