キミ色ヘブン
なんで言われるがままに目を閉じてしまったんだろう。

でも──

ちっとも嫌じゃなかった。
きっとあの透き通る様な空と挑発するような風とキラキラのせいだ。あんまりにも大きな空の下で自分がちっぽけな存在に感じたからだ。

きっと──

そっと唇を撫でてみる。

「うわッ」

あの瞬間を思い出そうとするだけでカッと頭全体が熱くなる様な感覚に目を背けたくなる。

バシャバシャといつもより冷たい水で顔を洗って、鏡の前でストレートの茶色の髪にブラシを通すと少しだけ気持ちが軽くなった。

完全に中山君のペースだった海の一日。

「今日からは違うんだから」

決意を新たに玄関のドアを開けた。

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