キミ色ヘブン
「あ……髪」

第二美術室に入って来るなり中山君はそう言った。

気づいた。やっぱり気づいた。

似合うよね?前より明るくて軽い感じで。お金もかかったし、時間もかかったし、お姉ちゃんにはお小言までもらっちゃったけど。皆、似合うって言ってくれたもの。

「びっくりした?」

中山君の彼女としてはピッタリな色でしょう?合格でしょ?

ちょっと毛先を指先でつまんで彼を見上げる私は今日で一番完璧なハズ。

そう、今日からは私のペースで──

「……白川さんは黒髪のが似合う気が。あッ、ごめん。つい本音が」

「…………」

申し訳なさそうにでもしっかり自分の意見を言うところが憎たらしい。

「あ、これ。こっちが白川さんので、これは僕の」

つまんでいた髪の代わりに渡されたのは一本の赤いチュッパチャップス。ごつい手にはもう一本の緑のチュッパチャップス。

「…………バカ」

「え?何か言った?」

「別に」

さっきまでのスキップしそうな気分なんて一気に消失してしまった。
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