キミ色ヘブン
私にとっては普段通りの放課後、

「白川さん、勉強教えてくれない?」

第二美術室に来た中山君がそう言ったのは6月だった。

「なんで?」

「単位、ヤバイ」

照れくさそうに笑う中山君に『いいよ。いつでも』と即答した。一応私、特進だし。

それに……だって、だって。

放課後に彼氏と図書館で肩を寄せ合い勉強って、妙に恋人っぽいじゃない?
実は今まで誰にも言ってなかったけど、“放課後、肩を寄せ合い勉強する”っていうシチュエーションに凄く憧れていた。いつもそんなカップルを見ては羨ましく思ってた。

私もついに『羨ましい』と言われちゃうかも。
『ねぇ、本当に中山君と付き合ってるの?さっき彼氏、真っ赤な髪の女の子と歩いてたよ?』とか好奇心を隠し切れないおせっかいな告げ口も気にしないですむようになるかもしれない。

「じゃ、ここで勉強教えてもらおうかな~。ここ、あんま人が来なくていいよね」

「え!?ここ?と、図書館は?」

そう、図書館じゃなきゃ人の目につかないでしょ?『羨ましく』見えないでしょ?
それじゃ困る。
< 52 / 215 >

この作品をシェア

pagetop