BELLADONNA -沈静の劇薬-
男は酷く疲れていた。肩を上下にさせ、深く息を吐いて、自分に近付いてきたのだ。
「こんな所に…。先代の別れの儀式は終わりました。
息子のジーノ様には、大変申し訳ありませんが、此方が…」
『ああ、いいよ。
私が行かなかっただけだから。
私は逃げたんだよ。父から。そして、父が残したものから。』
ジーノがいる場所は決して海に隣接された教会の中ではない。
教会から間逆、しかし、教会と街を一望できる高台から父の別れの儀式を見ていたのだ。