BELLADONNA -沈静の劇薬-
本来なら、血族で最も濃いジーノが式を仕切らなくてはいけない。
遠い東の島国の言葉を借りるとするならば【喪主】というものだ。
ここに逃げてきたのは、父を慕う者たちからの好奇な目から逃れるためである。
【お前のような若造に、この国を治められるのか】
口にしなくても、心のどこかで疑い、馬鹿にしているのではないかと…。
『私は…王になんか……なりたくない。』
ああ、この言葉が風と共にどこかへ運んではくれないだろうか。
「ジーノ…様。」
先々代の頃から我が一族に仕えているダロンバレン家のエルドは言葉を失った。