八月の指定席【花火・短編】
「バーッカじゃない?どーせアンタたち、花火あがる前に寝ちゃってるくせに!」

マコが、メンバーの一人にそう言った。

確かにそうかも。

毎年、コイツら全員ここで横になってるしな。

「何言ってんだよー、今年は絶対寝ないから!見るぞ、花火!!」

オレ以外の男二人が、肩を組んで盛り上がっている。





ったく、勝手にしてくれ。

オレは花火なんてゴメンだから。

花火があがる時間になったら……キッチンにでも立って

ツマミでも作っとくかな。





結局窓は開け放たれたまま、

一時間が過ぎた。






とうとう……

花火があがり始めた。




――ドーンドンドン

という音を響かせ、

オレの胸に、

過去の記憶を刻んでいく。





嫌だ……また思い出しそうだ。

あの時の彼女の表情、

サヨナラと言われた最後の顔。





いっそのこと、ここから引っ越してしまおうか。

毎年同じ位置から見える、

あの花火は……

オレにとって、残酷以外の何ものでもないから。














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