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◆忘れものとお楽しみ(陰陽師 二次)【田舎犬 1周年記念小説】
緑の葉が揺れて小鳥がさえずりそうな、そんな清々しい朝。
昨夜泊まっていった博雅を見送り、部屋に戻った晴明は、早く仕事を片付けてしまおうと書物を開いていた。
そこに、
「晴明っ!」
慌ただしい足音と共に、再び現れた博雅。
切羽詰まったようなその表情を目にした晴明は、無意識の内に眉をひそめていた。
「なんだ」
鬼が出たか。
それとも別の何かか。
どちらでも、そう大差はない。
そんなことを考えながら聞いた晴明に、博雅は言った。
「おれの笛を、葉二を見なかったか?」
「………は?」
予想だにしない博雅の問いに、晴明は目を丸くした。
「ないんだ。ずっと懐に入れていたのに」
そう言って、懐を探る博雅。
その表情は真剣そのもの。
「…ふっ」
そんな博雅を見て止まっていた晴明は、事の重大さと表情の違いについ笑ってしまった。
「晴明よ、何がおかしい」
明らかにむっとした表情をする博雅。
博雅にとってこれは重大な事なのだから、当然の反応だ。
しかし、今の晴明にとっては笑いの種にしかならない。
「…ふふっ、はははっ」
「晴明!」
「ああ…すまない。博雅、葉二はおそらく寝室にある」