保存用
◆雨乞いの、そのあとに(陰陽師 二次)

しとしと、と雨が降っている。
雨のせいで庭の草木や門が霞んで、ぼんやりとしか見えない。
廊下も心なしか濡れているように見える。

そんな中、つまみを前に酒を飲み交わす者が2人。
晴明と博雅だ。
しかし先ほどから2人とも、何も喋らない。
ただぼんやりと庭を見ている。
静かな空気の中、博雅がおもむろに口を開いた。

「これは、晴明が降らせたのか」

「そうとも言うが、違うとも言えるな」

「そうか」

そして再び沈黙が訪れ、2人は庭に目をやった。
しばらくすると、また博雅が口を開いた。

「晴明」

「なんだ」

「…いや、呼んでみただけだ」

「…そうか」

「ああ」

晴明は酒をくいっと飲んで、注いだ。
博雅はつまみを口に入れた。
そしてまた庭に目をやった。
と、今度は晴明が口を開いた。

「おれがいない間、なにかあったか」

「いや、特には」

「そうか」

「…なあ、晴明」

「なんだ」

「…居たんだな」

< 20 / 42 >

この作品をシェア

pagetop