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その台詞に、晴明は軽く目を見開いて言った。
「そりゃいるさ」
博雅は庭に目をやったまま言った。
「ここ数日、居なかっただろう」
「雨乞いに行っていたからな」
「ああ、知ってるよ」
「うむ」
博雅が酒をくいっと飲んで、注いだ。
そして、その水面を見ながら言った。
「実は言うとな、お前がいない間は少し寂しかったよ」
「ほう」
「おれはお前が好きなのだと、改めて思った」
「そうか」
「ああ」
コトッという音がして、晴明がお猪口をお盆に置いた。
「…明日のつまみは魚がいい」
博雅はフッと笑って答えた。
「ああ、分かった。持ってくるよ」
「うむ」
晴明は返事をして酒を注いだ。
そして博雅を見た。
博雅は晴明と目を合わせて、すっと庭を見た。
晴明もそれにならった。
庭には先ほどと同じように、しとしとと雨が降り続いていた。
end.