保存用

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ふっと重い瞼を上げると、視界に入ってきたのは天井だった。
次に入ってきたのは、先ほど聞いた笛の音。
ゆっくりと首を動かして横を見ると、博雅がこちらに背を向けて簀子に座っている。
正確には、座って笛を吹いている。

これが正面からなら絵になるのになぁ…

そんなことを考えながら、博雅に声をかける。

「…ひろ、ま…さ…」

しばらく寝たままだったからか、喉がカラカラに乾いていて、声が上手く出なかった。

「…、晴明…っ!!」

しかし、相手にはしっかり聞こえていたらしい。
ピタリと笛の音が止んで、凄い勢いで振り返った。
晴明は話をするために起きようと畳に手を着くが、上手く力が入らず倒れそうになる。
すると、博雅が体を支えてくれた。

「…っ、危ないじゃないか!」

「…ああ」

少しぼーっとする頭でそう返事をすると、目の前にある博雅の顔が泣きそうに歪んだ。
そして次の瞬間には、優しく抱きしめられていた。

「良かった…っ!もう…もう、帰ってこないかと思った…!」

少し涙ぐんだ博雅の声。
それを聞いた晴明は、知らないうちにふっと安堵のため息と笑みをこぼしていた。

俺は帰ってきたんだ。
俺は今、生きてるんだ。



そう実感した。
けれど、それを博雅に知られるのがなんだか嫌で。
口のすぐ側にある耳に、内緒話をするように言った。

「……俺を、誰だと思ってる…?」

それを聞いた博雅も、ふっと笑って晴明の耳元でこう言った。

「――………」





end.

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