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◆蛮幽鬼(二次 死ネタ)

キン…キン…ッ、キィン……ッ

剣のぶつかる音が辺りに響く。
静かに、けれど力強く空気を切り裂いて、何度も何度もぶつかる。

音の発生源は2人の男。
一方は長髪で、顔に似合わない見事な白髪。
一方は黒髪で、この場に不釣り合いな笑みを浮かべている。

キィン…ッ

2人の間に会話はない。
しかしその代わりとでもいうように、互いの視線を合わせたまま動かさない。
近付いて、離れて、入れ代わって。
それを繰り返す間にも、視線がずれることはない。

次第に2人の息は上がっていき、そして――…

キィィ―…ィン…ッ

剣は弾かれた。
それは、どちらかの死を表す音。

「っ、は…っ、はぁ…っ」

「残念。あと少しだったのに」

弾かれたのは、黒髪の男だった。
その男は、追い詰められても笑みを崩さなかった。
白髪の男は顔を歪め、悲しみと怒りの混じったような目で黒髪の男に問う。

「っ、なぜ…っ、なぜこんなことをした、サジ…っ!!」

黒髪の男――サジは、相変わらずの表情で言った。

「なぜって…理由は君の方がよく知ってるだろう?」

「…っ、だが…っ!!」

「嫌なら…僕を殺せばいい」

「……」

男は、悲痛な表情を浮かべてサジの首元に剣先を向ける。
そして一瞬だけ目を閉じ、ぐっと剣を持つ手に力を入れて剣を振り上げた。

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