保存用
「…っ!」
しかし、サジの真顔を見て止まってしまった。
その瞬間を待っていたとでもいうように、サジの唇が素早く動く。
「――………」
それは無声音。
けれど、確かに男には聞こえていた。
男は目を見開いて、驚いた表情でサジを見つめる。
そして、ゴボ…ッと血を吐き出した。
男の左胸には、短剣が刺さっていた。
サジが刺したものだ。
「惜しかったねぇ。躊躇わずに切れば、君の勝ちだったのに」
ズル…ッと、男から短剣を抜くサジ。
ボタボタッと血が落ち、地面に赤いシミを作る。
「…ぁぐ…っ、が、は…っ」
短剣を抜かれた男は、ガクンッと膝をついた。
刺されたのが急所だったこともあってか、すでに焦点が合っていない。
「あんなので戸惑ったりしちゃ、すぐ殺されちゃうよ?次から気を付けなきゃ」
カランッ
短剣を放り投げて男に近付くサジは、相変わらずの笑顔。
サジは地面に膝を付き、そのまま男を仰向けにして抱きかかえた。
男は焦点が合わない目で、何かを探すように視線をさまよわせてる。
「…っ、はぅ…っ、ぁ……」