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「ああ…君に次なんかないか。だって僕に殺されるものね」
サジはクイッと男の顔を自分の方に向け、さまよっている視線を合わせようとする。
男はサジを見ると、パクパクと口を動かした。
「…、……」
が、音になる前に絶命した。
そんな男を見るサジは、いつも通りの表情。
しかし、男の頬をすっと軽く撫でると、ぼそりと呟いた。
「……ずっと、ずっと夢だったのに…なんでだろう」
ポタ…ッ
なんで、涙なんて出てくるの
なんで、こんなに声が震えるの
なんで、こんなに寂しくなるの
疑問で埋め尽くされて上手く頭が働かないサジは、男の頬を撫で続けてながら問う。
いつものように笑いながら、けれど本当に泣きながら、問う。
「…ねぇ、君なら分かるだろう?」
ずっと、恨み続けてた君なら。
僕にない感情を持ってる君なら。
僕が笑ってる理由が、泣いてる理由が、悲しむ理由が。
すっと、男に顔を近付けながらサジは言う。
震える声で問う。
「ねぇ教えてよ、土門。…じゃないと」
また、君を殺しちゃう。
土門に口付け、抱き締めたまま涙を流すサジの頬を、冷たい風が撫でていった。
end.