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◆刹那の幸福(陰陽師 二次)

もうずっと前から分かってた。
こういう結末しかないこと。
こういう終わり方しかできないこと。

ずっと前から、分かってはいた。
でも、こんな終わらせ方はしたくなかったから。
こんなことをしたら、悲しませてしまうことを知っていたから。
分かったときから、探してた。
悲しまない方法を。
1人にならない方法を。
1人にしてしまわない方法を。
けれど――…

「そう、上手くはいかないよなぁ…」

出会ってから何年たったか。
どんな出会いだったか。
何を話したか。

そんなことはもう大分昔のことのように思えて。
そんなことを思い出す必要がないほど、楽しい時を過ごして。

「もう、十分だ…」

そう思えるほど、幸せな時だったから。
これ以上踏み込めば、もう引き返せないから。

「さよならだ、博雅」

酔って寝てしまった博雅の頬に、これで最後と、軽く口付けて。
名残惜しく思いながら、廊下を歩く。

後悔などしていない。
けれど、全て良かったとも言い切れない。

「…結局俺も、ただの人間だったということだな」

こみ上げてくるあざ笑いを、抑えようとは思わない。
この苦しみも愛しさも、全て自分で撒いた種。
拾うことはもうできないけれど、枯らすことは出来るから。

だから――…





end.

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