保存用
◆blind

空がオレンジ色から藍色に変わっていく時間帯。

私はこの時間帯に学校の図書室に行くのが日課だ。
別に本が好きなわけじゃない。
あの空間が好きなんだ。


……そう…ただ、それだけ


入り口に1番近いカウンターの横をすり抜けて。
その時に先輩がいるかチェックして、けど目は合わないように気をつけて。
そのまま奥の棚に行き、お気に入りの一冊を手に取る。

そして、こっちからカウンターは見えるけど、あっちからは見えにくい場所を陣取って。
本を読む振りをしながら、先輩を見る。

私はここが好き。

一緒じゃないけど、一緒にいて。
遠いけど、近くにいる。
そんな気がする、この空間が好き。

友達にはそんなに好きなら話しかければいいじゃんって言われたけど、そんな勇気私にはないし。


そんなことしてこの空間が壊れちゃうの、嫌だし……


だから、ずっと片想い。
それでいいの。


・―・―・―・


先輩の係りが終わる5分前、私はいつものように本を棚に戻して、何も借りずに帰ろうとした。


今日、先輩の顔見れるのはこれが最後かぁ…

少し寂しく思いながら、カウンターを通り過ぎるときにチラッと先輩の顔を見た。
すると、

……パチッ

目が合ってしまった。

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