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「倥姫様、こんなところでなにをしていらっしゃるんですか?」
呆れと安堵でなんとも言えない表情をしながら、倥に問う志摩。
倥は、その問いに答えずに人差し指を立てて唇に当てながら、小声で言った。
「しーっ!」
そして小さく手招きをすると、少し先にある木の根元を指差した。
「……あ…っ!」
その先には白い子猫が丸くなって寝ていた。
「ね?可愛いでしょ」
そう言ってニコニコと笑う倥。
見付けたら叱ろうと思っていた志摩は、すっかり毒気を抜かれてしまい、何を言おうか迷った末にこう言った。
「本当、可愛いですね。どこから来たんでしょうね?」
「きっと寒いところからきたのよ。毛が真っ白だもの」
そう言って目を輝かせる倥。
志摩はその様子を微笑ましく思いながら、子猫に目を向けた。
その時にふと生じる違和感。
「……あんなに小さい子猫の近くに親猫がいないなんて…おかしいですね」
志摩のその呟きに倥は不思議そうに言った。
「そうなの?でも、あの子は私が見つけた時から一匹よ?」
「では…親と、はぐれてしまったのでしょう」
眉をひそめながら言う志摩。
それを聞いた倥はさっきとは全く違う、悲しそうな顔をしてぼそりと言った。
「かわいそう……」