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◆Mistake

「先輩、聞いてください」

お昼休み終了、15分前。
屋上でようやく見つけた先輩に近付いて、できるだけ真剣に聞こえるように言った。

「…はあ。ま、とりあえず座んなよ」

先輩は一瞬呆けて、自分の隣をポンポンと叩く。

「失礼します」

そう言って僕が座ったのは、先輩の正面。
日に当たる場所なのに、不思議と熱くない。
先輩は僕の行動に、少しだけ不思議そうに眉を寄せた。

「…で、急にどしたの?」

左手にパン、右手にお茶を持ちながら尋ねてくる先輩。
もぐもぐとパンを口に運びながら、目だけは僕を見てる。

「…あの」

その目がなんだか怖くて、ちゃんと見れなくて。

「ん?」

妙に寒くて、手が震えて、顔が熱くて、心臓がうるさくて。

「…す……好きな人が、できましたっ」

耐えきれなくなった僕は、下を向いてしまった。
1番肝心な所で。
1番、目を見て言わなければいけないところで。
しかもなんだ、好きな人がいるって。
そういうことを言いたいわけじゃないのに。

「…」

先輩は無言。
当然だ。
だって意味が分からない。
でもとりあえず、言いたいことを言い切らなくては。
ちゃんと目を見て言えなくて格好つかなくても、伝えきらなきゃ意味がない。

「……それで、あの…」

先輩、と続けようとしたとき。

「ああうん、そうなの。どんな子?」

突然過ぎる質問に、僕はパニックを起こしかけた。
何か勘違いしているようだ。
すべて自分のせいなのだが。

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