大富豪
3人が斉藤を見た。斉藤の目は市原を捕えていた。

「何で急に?!」
本当に急だ。先ほどまで、一言も口を利かなかったのに…。

「ただ…なんとなく、だ」
そう言いながら、斉藤は俺の方を見てきた。

いや、確かにありえる。今の俺の手札は
クラブのA、4、5、6、K
スペードの6、8、10
ハートの3
ダイヤの2、7、J
 
既に、3枚の2が流れている。そして、最後の2は俺の手元にある。
ということは、あいつは、他の誰が2を持っていようとも、Aのダブルに勝てる形では出せない。

つまり、2とジョーカーを一緒に持っていないと確信していたわけだ。
だから確認もなしにカードを流した。

市原は、またびくびくしながら3を出した。
しめたとばかりに、俺は4を出した。
これは雑魚いカードを使えるチャンスだ。

続けて、藤川も5を出した。斉藤も6を出す。
一巡して、市原まで戻ってきた。市原は8を出す。
俺も、10を出した。

藤川を見ると、額に汗が並んでいる。
最初にペースをあげすぎて、手札が寂しくなってきたのだろう。しかし、行動は落ち着いており、今回もさらっとJを出した。斉藤も落ち着いてQを出す。

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