クーラーの部屋【短編】
「まあ、明日からこの部屋じゃなくても合えそうだし」
そう言って笑った彼がやけに可愛くみえた。
あまりにも嬉しそうに笑うもんだから、
嬉しくて私も笑みを返した。
「クーラーがあるから私の部屋に来たわけじゃないんだ」
「クーラーがあるからだよ。
俺暑いの嫌いだし」
ゆっくりドアに手をかける。
ドアをあけ、廊下に出て一度私の方に振り返った。
「クーラーあるのは静音の部屋だけじゃないよ」
私の目を真っ直ぐみてそう言った。
すぐにドアはパタリと閉まり、浩平の姿は見えなくなった。
ここだけじゃない……ね。
暑いのが嫌いな浩平とこの部屋以外で会うのなら、このクーラーも役割半減かな。
なんて、
嬉しい私はクーラーに同情してみたりする。
2010,07,24