距離は遠とし。





コンコン


「ツキ・・・?」


コンコン


「入るよ?」


キィー


「あれ?・・・あの子またどこに行ってるのよ・・」


ここだよ。



「今日は暖かいわね。・・・ねぇ、ミミちゃん」


母さんはミミを想って泣くのをやめた。


ミミを想って泣いていたらミミが悲しむと分かったからだ。



ミミが死んでから時間が少しだけ流れた。


俺は高校を卒業し、大学生になった。


あの頃よりまた少し身長が伸び、声も低くなった。



でもあの頃の気持ちは変わっていない。


「ミミ・・・元気か?」


俺は毎日屋根の上で空にいるミミに語りかける。



「そういえばミミが大好きだったクローバー・・・今年で潰れるってさ」


この不況の中だ、とうとうクローバーも潰れてしまった。



「お前と最後に約束したよな?覚えてるか?」


"じゃあ願ってみるから、もしもそれが叶わなかったら、俺の言うこと聞けよ?"


「なに言うこと聞く前に死んでんだよ?」


俺があの日てっぺんで願ったこと・・・それは


いつまでもミミの隣りを歩いていられますように・・・―――



俺にとって1番叶えたかった願いだった。



でも・・・それは叶わなかった。



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