【花集】線香花火に叶わない願いを

「おはよう」

『おはよ…』


車の前でタバコを吸う彼がたまらなく絵になる。


「今日可愛いじゃん。乗って」


さりげなく言って助手席のドアを開けてくれる彼にあたしは笑みがこぼれる。


時間をかけた甲斐があった…。


『早かったね?』


あたしを載せてから運転席に回った彼に言う。


「そう?あいつ送ってそのまま来たからな」


あいつっていうのは彼女の事。

今日から独身最後の旅行に友達と行くんだって。


さっきまで彼女が乗って居たんだろうこの席。

微かに甘い香りがする気がする。


あなたは本当、変な所正直だよね。

浮気相手に彼女の事匂わすなんて…。



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