あの雨の日、きみの想いに涙した。
拒みながらも受け入れてきた。うざいうざいと言いながら体を許してきた。それは間違い事実。
女とヤるのはすべて暇潰しで他に理由なんてない。そんなのカッコつけのただの言いわけ。
最初は人の暖かさを知りたくて女に触れた。
次は人とどんな形でもいいから繋がりたくて触れた。
今はだれかに求められることで自分の存在価値を探している。
〝冴木由希〟
いつからか俺は自分の中にもうひとりの自分を作っていた。
街を歩けば名前を呼ばれて、知らない人が俺のことを知っている。本当の俺は臆病で泣き虫で部屋の片隅でガタガタと震えていたはずなのに。
だけど小さい頃の俺はだれかを守りたいと思える心を持っていた。そしてたぶん、星空を見たら綺麗だねって言っていた。昨日の俺みたいに。
俺は……変わらなきゃいけないんじゃない。
変わってはいけなかった。
『冴木由希は弱いだけよ』
あの日の青木の言葉が頭に浮かんだ。
そうだ……。俺が弱かった。
すべてを過去のせいにして、なくしてきたなにかを取り戻したいと思いはじめていた。簡単ではないけれど、そう思えたことで心に柔らかな風が吹いた気がした。