あの雨の日、きみの想いに涙した。
――『俺女とヤるの止めるから』
そう昼休みに言った数分後、瞬く間にそれはみんなへと知れ渡った。
「由希がこんなこと言ってたらしいんだけど……マジ?」
「えームリ……!女とヤらない由希は由希じゃない!」
「冴木のヤツ真面目になったっぽい」
「あいつが?ありえねーよ。ただのガセだろ?」
あちらこちらで俺の話をしている声。
廊下に出ても教室にいてもヒソヒソと聞こえてくる。……うざい。うざすぎる。
「ちょ、冴木。お前本命の女ができたってマジ?」
教室で竹田が突進する勢いで近づいてきた。
「は?なにそれ?」
裏でごちゃごちゃ言われるぐらいなら直接聞いてくれたほうがいいけど、なんでそんなことになってんの?
「いや、さっき廊下で聞いたからさ。え……それってもしかしてなっちゃん?」
いやいや。べつに本命もなにもそんなヤツいねーし、そんな理由で女とヤるのを止めるって言ったわけじゃないんだけど。それに……。
「俺が女を好きになるわけないだろ?」
机に頬杖をつきながら竹田に言った。
「えーなんでよ?お前がなっちゃんを好きになったなら応援してやろうと思ってたのに」
「バーカ。下らないこと言ってないで早く席に着けよ」
――キーンコーンカーンコーン。
その瞬間、5限目のチャイムが教室に鳴り響いた。