あの雨の日、きみの想いに涙した。
家に着いて玄関を開けると電話が鳴っていた。
それはスマホではなく家の電話。
リリリリリーン……リリリリリーン……。
古い型の電話はベルのような音が鳴り、最近はめっきり家電なんて使わないから存在すら忘れかけていたけど。
……だれだろう。じいちゃんが死んでばあちゃんが施設に入居してからはもうほとんどかけてくる人もいないし、たぶんなにかの勧誘か間違い電話かもしれない。
リリリリリーン……リリリリリーン……。
居留守を使おうと思ったのに電話のベルはやたらと長い。
あんまり出たくないけど、永遠に鳴っていそうな気もするし、俺は仕方なく受話器をとった。
『はい』
そこから聞こえてきた見知らぬ声。電話の向こう側の第一声で俺は嫌なことが頭を過った。
淡々と話される声が右から左へと流れていく感覚。
だんだんと状況を理解してく中で俺はただ『はい、はい』と途切れ途切れに返事をする。
受話器をまだ耳に押し当てたまま、俺はじいちゃんと母親の遺影が飾ってある仏壇に目を向けた。
老人ホームにいたばあちゃんが死んだ。
それを知らせる電話はまだ続いていたけど、あまり頭に入ってこなかった。