あの雨の日、きみの想いに涙した。



『まあ、久しぶりの会話なんだからそう焦らず話をしようぜ』

電話の向こう側でカンッと金属音した。そのあとゴクゴクと喉を鳴らしてなにかを飲みはじめる。

こいつが飲むものなんてひとつしかない。


『酒飲んでまともな話ができるのかよ』

『俺は酒を飲んでも飲まなくてもまともだよ』

またグビックビと喉を鳴らす音。

……やっぱりこいつは人間のクズだ。


今の発言を本気で言ってるのか酒の酔いで言ってるのかは知らない。

でも子どもや妻に暴力を振るい続けて家族をめちゃくちゃにしたくせに、それでもまだこんなふざけたことを言ってる男は本当に本当にクズだ。


それで……こんな男に植えつけられた傷がまだ癒えていない自分がどうしようもなく情けなかった。

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