あの雨の日、きみの想いに涙した。
俺はふっと母親の顔を思い出していた。
なぜこんな男のことを好きになったんだろう。
なぜこんな男と結婚したのか。
なぜなにも言わずに自殺した?
返事なんて返ってこないのに、何度も何度も心の中で問いかけた。
俺を捨てた母親をこいつと同じように恨んでいたけれど、
もしあの時俺がこの男を殺していたら母親は死なずに済んだのだろうか。
そしてふたりで笑って暮らせる未来があったんだろうか。
何度も何度も何度も問いかけてみたけど、やっぱり返事は返ってこない。
『お前いくつになった?えーとあれから5年だから16くらいか?』
俺がこんな葛藤をしているとも知らずに平然と喋り続ける男。
本当に俺と世間話でもするつもりなのか?
ふざけやがって。