あの雨の日、きみの想いに涙した。



『ぷっははは!!やっぱりお前は俺そっくりだわ。そういう短気なところとかな』

ドクン……。

『は?てめえと一緒にするんじゃねーよ』

『ふっ、てめえか。ビービー泣いてたガキが俺に反論できるくらいの歳になったか。まあ、いいや。そろそろ本題に入るとするか』

泣いてた?誰のせいで?


もうこの男は本当に頭がおかしい。

俺は電話を切るつもりでいたのに〝本題〟と言われて手が止まる。聞く必要もないし聞きたくもないけど、この男がわざわざ電話してくるほどの用件が少しだけ気になった。


『ばあさんが死んだろ?その家俺に譲れ。そんでお前は今俺が住んでるアパートで暮らせ』

一瞬、時間が止まったかのように思考が停止した。


それは言っている意味がわからなかったからじゃない。

なぜこの男はこんなことを平然と言えてしまうのか。

なぜこんなにも当たり前かのように言えるのか。

この男に普通の神経が通っていないことは知ってる。でもまさかここまでとは……。

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