あの雨の日、きみの想いに涙した。



理不尽さに呆れながら、俺は一番正しい反論をした。


『なに言ってんの?アンタは母さんと離婚して、ばあちゃんともこの家とも無関係の人間。え?本気で頭がおかしいの?』

老人ホームからの電話のあとにすぐかかってきた時点で怪しいとは思ってたけど。

どこからばあちゃんのことを知ったかは知らないけど、昔からズル賢くてラクをすることばかりを考えていたヤツだから、なにかしらの情報網で知り得たんだろう。


やっぱり電話なんてすぐ切ればよかった。

本当に時間の無駄だったな。俺は受話器を耳から離して切ろうとした瞬間……。


『お前こそ、なに言ってんの?』

ありえない言葉が飛んできた。思わず『は?』と受話器を耳に戻す。男はまた酒を飲みはじめて俺の反論をあざ笑うように言った。



『お前は俺の息子で俺はお前の父親だ。無関係なわけがないだろ?』

……ドクンッ。また心臓が大きく跳ねる。


ただただ、当たり前のことを言われた。

そんなことは言われなくても知っている。それなのに胸をナイフでえぐられたようなそんな気分がした。

< 115 / 291 >

この作品をシェア

pagetop