あの雨の日、きみの想いに涙した。
俺は外に出た。
だれもいないこの家に一秒もいたくなかった。
息ができないほど苦しくて、外に出たら息が吸えると思った。
だけど外に出ても苦しくて、空を見上げると灰色で、俺の一番嫌いな色。
香月町南口付近は夜でも人が多くて、俺はその人混みの中にいた。俺の家がある東口と同じ町とは思えないほどだ。
普段なら寄りつかない南口に来た理由はザワザワとした空間にいたかったから。
人混みに埋もれて跡形もなく消えてしまいたい。繁華街の雑音と一緒に俺を掻き消してほしかった。……でも。
「あれ?冴木くんじゃん」
周りはそれを許してくれない。