あの雨の日、きみの想いに涙した。




駅周辺の大通りで数人の男たちに囲まれた。だから嫌なんだ。南口に行くとだれかしらに絡まれる。

それをわかってて来た俺がバカなのかもしれないけど、あの家にいるよりはマシだと思った。今日ぐらいそっとしておいてほしいのに、そんな願いさえ叶わない。


「女漁りに来たんですか?」

「あれ、冴木くん真面目になったって噂で聞いたんだけど」

「ああ。女とヤるの止めたってやつ?……ぷっ、マジ散々ヤラかしといてなにを言ってんだか」

男たちの声は俺の耳にぼんやりとしか聞こえてこなかった。

それは周りの音がうるさいのか、俺の耳がおかしくなってしまったのかはわからない。


「おい。シカトしてんじゃねーぞ」

……ドンッ!男のひとりが俺を思いっきり突き飛ばした。


いつもなら突き飛ばされるどころか男の手が体に触れる前にねじ伏せる。それなのに俺の体はまるで紙切れのようにストンッと地面に吸い込まれていった。


男たちはしゃがみこんでいる俺を見下ろしながら、信じられないものを見るかのように目を丸くさせていた。

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